余暇政策論ノート( 京都市の風景保全に関する取り組み)030604 

               010104k 石原 佳菜子

京都市の町並みの美しさは、日本のみならず、世界で有名である。しかし、現代の日本は、高層ビルが立ち並び、昔からの日本の風景は失われつつある。そんな中、京都市は、古来の町並みを残すために、どうのような努力をしているのか調べてみた。

(1.   建造物に対する規制

京都市の、風景を守るために作られた条例がある。それは、平成7年に作られた、京都市自然風景保全条例だ。その中の第一章の総論で、{この条例は,本市の市街地からその背景として眺望される緑豊かな山並みが,長い歴史を通じて我が国の文化をはぐくんできた京都の町及びこれを流れる川と一体となって山紫水明と形容される特有の優れた都市の風景を形成しており,その山並みの風景(以下「自然風景」という。)が,市民にとって日常生活の中で親しく見慣れてきた風景としてかけがえのないものであるとともに,すべての国民にとって貴重な文化的資産であることにかんがみ,自然風景の保全に関し必要な事項を定めることにより,快適な生活環境の保全に資するとともに,自然風景を将来の世代に継承することを目的とする。}とある。この目的にも記されているとおり、京都市の風景(または、外観)保全は、条例によって詳細に定められている。また、この他に、昭和51年に作られた、京都市伝統的建造物群保存地区条例というものもある。これは、京都市の中で、歴史的建造物が密集している地域で、歴史的建造物のある町並みを守るための条例だ。歴史的建造物の保存に関しては、京都市美観風致審議会と市長および教育委員会が保存計画を立て、それに基づいて、京都市に新しく作られる建造物・元からある歴史的建造物に関して、規制するものである。その中で第4条 {保存地区内において,次の各号に掲げる行為をしようとする者は,あらかじめ,市長及び教育委員会の許可を受けなければならない。

(1) 建築物等の新築,増築,改築,移転又は除却(以下「新築等」という。)

(2) 建築物等の修繕,模様替え又は色彩の変更でその外観を変更することとなるもの

(3) 宅地の造成その他の土地の形質の変更

(4) 木竹の伐採

(5) 土石の類の採取

(6) 水面の埋立て又は干拓}と、建造物だけでなく、その回りの木材や土石までも規制の中に入れている。また、 市長及び教育委員会は,第1項の規定による許可をする場合において,必要があると認めるときは,保存地区の保存のために必要な限度において条件を付することができる。

(許可の基準)

5条 市長及び教育委員会は,前条第1項各号に掲げる行為で次の各号に定める基準(市長にあっては,第8号に定める基準)に適合しないものについては,同項の規定による許可をしてはならない。

(1) 伝統的建造物の増築もしくは改築または修繕,模様替えもしくは色彩の変更でその外観を変更することとなるものについては,これらの行為後の伝統的建造物の位置,規模,形態,意匠または色彩が当該伝統的建造物群の特性を維持していると認められるものであること。

(2) 伝統的建造物の移転(当該保存地区内における当該伝統的建造物の移築を含む。以下この号において同じ。)については,移転後の伝統的建造物の位置及び移転後の状態が当該伝統的建造物群の特性を維持していると認められるものであること。

(3) 伝統的建造物の除却については,除却後の状態が当該伝統的建造物群の特性を維持していると認められるものであること。

(4) 伝統的建造物以外の建築物等の新築,増築もしくは改築または修繕,模様替えもしくは色彩の変更でその外観を変更することとなるものについては,これらの行為後の当該建築物等の位置,規模,形態,意匠または色彩が当該保存地区の歴史的風致を著しくそこなうものでないこと。

(5) 前号の建築物等の移転については,移転後の当該建築物等の位置及び移転後の状態が当該保存地区の歴史的風致を著しくそこなうものでないこと。

(6) 第4号の建築物等の除却については,除却後の状態が当該保存地区の歴史的風致を著しくそこなうものでないこと。

(7) 前条第1項第3号から第6号までに掲げる行為については,これらの行為後の地ぼうその他の状態が当該保存地区の歴史的風致を著しくそこなうものでないこと。

(8) 前各号に定めるほか,当該行為後の建築物等または土地の用途等が当該伝統的建造物群の保存または当該保存地区の環境の維持に著しい支障を及ぼすおそれがないものであること。

(国の機関等が行なう行為等の特例)

このように、外観に関わるすべてのものについて、細かく規定が決まっている。

また、京都市の景観を守るために、定められた、京都市市街地景観整備条例がある。私は主にこの条約について調べたいと思う。内容は以下に挙げたように、京都市固有の趣のある市街地の景観が市民にとって貴重な文化的資産であることにかんがみ,建築物その他の工作物の位置,規模,形態及び意匠の制限に関する事項その他市街地景観の整備に関し必要な事項を定めることにより,良好な都市環境の形成及び保全に資するとともに,当該景観を将来の世代に継承することを目的とする。

2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 市街地景観の整備 市街地の景観の維持及び向上をいう。

(2) 美観地区 都市計画法第8条第1項第6号に掲げる美観地区をいう。

(3) 建築物 建築基準法第2条第1号に掲げる建築物をいう。

(4) 建築設備 建築基準法第2条第3号に規定する建築設備(避雷針を除く。)をいう。

(5) 第1類工作物 高さが1メートルを超える自動販売機又はこれに類する工作物及び面積の合計が5平方メートルを超える軒先テント又はこれに類する工作物をいう。ただし,屋外広告物法第2条第1項に規定する屋外広告物(屋外広告物を掲出する物件を含む。)を除く。

(6) 第2類工作物 垣,柵,煙突,電波塔,高架水槽,彫像,観覧車その他の工作物(高さが1.5メートル以下であるものを除く。)で,市街地の景観に支障を及ぼすおそれがあるものとして別に定めるものをいう。ただし,屋外広告物法第2条第1項に規定する屋外広告物(屋外広告物を掲出する物件を含む。)を除く。

(7) 新築等 建築物その他の工作物の新築,増築,改築又は移転をいう。

(8) 模様替え等 建築物その他の工作物の外観(道路,公園,広場その他の公共の用に供する空地(以下「公共用空地」という。)から見えない部分を除く。)の過半にわたる模様替え又は過半にわたる色彩の変更をいう。

(建築物その他の工作物の高さの算定方法)

3条 建築物その他の工作物の高さは,建築基準法施行令第2条第1項第6(1種地域の美観地区内における建築物については,同号ただし書を除く。)の規定の例により算定するものとする。

(本市の責務)

4条 本市は,市街地景観の整備を図るために必要な施策を実施するとともに,市街地景観の整備に関する市民及び事業者の意識の啓発に努めなければならない。

(市民及び事業者の責務)

5条 市民及び事業者は,市街地景観の整備に関する本市の施策に協力しなければならない。

2章 美観地区

1節 美観地区の種別

6条 市長は,美観地区を次の各号に掲げる種別のいずれかに指定するものとする。

(1) 第1種地域 伝統的な建築様式による建築物が重要な要素となって,特に趣のある町並みの景観を形成している地域

(2) 第2種地域 歴史的な建造物又は道路,河川,公園その他の公共の用に供する施設(以下「公共施設」という。)が重要な要素となって,特に趣のある町並みの景観を形成している地域

(3) 第3種地域 建築物が群として山並みその他の背景と調和し,趣のある町並みの景観を形成している地域及び和風の建築物が立ち並んで,趣のある町並みの景観を形成している地域

(4) 第4種地域 京都の町の生活の中から生み出された特徴のある形態又は意匠を有する建築物が存し,趣のある町並みの景観を形成している地域

(5) 第5種地域 高層の建築物が群として構成美を示している地域及び第1号から前号までに該当しない地域

2 市長は,美観地区の種別を指定し,又は変更したときは,これを告示しなければならない。

3 美観地区の種別の指定及び変更は,前項の規定による告示によってその効力を生じる。

2節 建築物に関する制限

(行為の承認)

7条 美観地区内において次の表の左欄に掲げる区分に応じ同表の右欄に掲げる行為をしようとする者は,別に定めるところにより,市長の承認を受けなければならない。ただし,通常の管理行為,軽易な行為その他の行為で別に定めるものについては,この限りでない。

1種地域及び第2種地域

建築物の新築等又は模様替え等

3種地域

高さ(増築又は改築の場合にあっては,当該増築又は改築後の高さ。以下同じ。)10メートルを超える建築物の新築等又は模様替え等

4種地域

高さが12メートルを超える建築物の新築等又は模様替え等

5種地域

高さが15メートルを超える建築物の新築等又は模様替え等

2 市長は,市街地の美観を維持するため必要があると認めるときは,その必要の限度において,前項の規定による承認に条件を付することができる。

(承認の基準)

8条 市長は,前条第1項の規定による承認の申請があった場合において,当該申請に係る建築物が次の各号に掲げる基準に適合していると認めるときは,同項の規定による承認をしなければならない。

(1) 第1種地域,第2種地域又は第3種地域においては,高さが次の表の左欄に掲げる美観地区の種別に応じそれぞれ同表の右欄に掲げる高さ以下であること。ただし,公益上必要と認められるもの並びに形態及び意匠が特に優れていると認められるものについては,この限りでない。

1種地域

メートル

12

2種地域

15

3種地域

20

(2) 規模及び形態が,歴史的な建造物及び公共施設の外観並びに周辺の町並みの景観と調和し,かつ,均整の取れたものであること。

(3) 意匠がけばけばしい色彩,過度の装飾その他周辺の町並みの景観に違和感を与えるものでないこと。

(4) 建築設備が公共用空地から容易に見える位置に露出していないこと。

(5) 塔屋(階段室,昇降機塔その他これらに類する建築物の屋上部分をいう。)及び屋上に設ける建築設備は,適切な修景措置が施されており,かつ,位置,規模,形態及び意匠について建築物の本体と均整が取れていること。

 

このように、京都市市街地景観整備条約では、歴史的建造物とそぐわない建物・看板などを厳しく規制している。